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東京高等裁判所 平成6年(行ケ)28号 判決

東京都大田区下丸子3丁目30番2号

原告

キヤノン株式会社

代表者代表取締役

御手洗肇

訴訟代理人弁理士

本多小平

岸田正行

新部興治

古賀洋之助

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官

清川佑二

指定代理人

光田敦

幸長保次郎

吉野日出夫

主文

1  特許庁が平成3年審判第2467号事件について平成5年12月1日にした審決を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者が求める裁判

1  原告

主文と同旨の判決

2  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和58年2月10日、名称を「光ビーム走査装置」とする考案(以下、「本願考案」という。)について実用新案登録出願(昭和58年実用新案登録願第18626号)をし、昭和63年1月13日に実用新案登録出願公告(昭和63年実用新案登録出願公告第1287号)されたが、登録異議の申立があり、平成2年10月18日、登録異議の申立は理由がある旨の決定とともに、拒絶査定がなされた。そこで、原告は、平成3年2月21日に査定不服の審判を請求し、平成3年審判第2467号事件として審理された結果、平成5年12月1日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は平成6年1月17日原告に送達された。

2  本願考案の要旨

回転軸と、一方向に回転して光ビームを走査する回転多面鏡と、上記回転軸を回転させるためのロータ部と、上記回転軸を回転可能に軸受けする潤滑油を有する軸受手段と、を有する光ビーム走査装置において、

上記回転多面鏡と上記ロータ部を上記回転軸の同じ自由端側に設けて上記軸受手段を上記ロータ部により上記回転多面鏡側に露出させないことで上記軸受手段から飛散したオイルミストを上記ロータ部で遮断し、且つ上記ロータ部上に設けられた取付基準面に上記ロータ部より回転径が小さな上記回転多面鏡を密着して取付けたことを特徴とする光ビーム走査装置(別紙図面A参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本願考案の要旨は、実用新案登録請求の範囲に記載されている上記のとおりであると認める。

(2)  これに対し、昭和54年実用新案登録願第82003号(昭和56年実用新案登録出願公開第3513号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(昭和56年1月13日特許庁発行。以下、「引用例1」という。)、及び、昭和52年特許出願公開第151807号公報(昭和52年12月16日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、下記の事項が記載されている。

a 引用例1

出力軸と、一方向に回転して光ビームを走査する回転多面鏡と、出力軸を回転させるためのモータと、上記出力軸を回転可能に軸受けする潤滑油を有するベアリングと、を有する光ビーム走査装置において、

ベアリングから飛散したオイルミストを遮断してなる光ビーム走査装置である旨の記載(別紙図面B参照)

b 引用例2

光反射ミラーとコイル支持部材を回転軸の同じ自由端側に設けて軸受をコイル支持部材により光反射ミラー側に露出させず、光反射ミラーがコイル支持部材より小さい構成からなるミラー制御素子である旨の記載(別紙図面C参照)

(3)  本願考案と引用例1記載のものとを対比すると、引用例1記載の「出力軸」、「ベアリング」は、それぞれ、本願考案の「回転軸」、「軸受手段」に相当するから、両者は、

回転軸と、一方向に回転して光ビームを走査する回転多面鏡と、回転軸を回転可能に軸受する潤滑油を有する軸受手段と、を有する光ビーム走査装置において、

軸受手段から飛散したオイルミストを遮断してなる光ビーム走査装置

である点において一致し、下記の2点において相違する。

相違点〈1〉

本願考案においては、回転軸をロータ部によって回転し、回転多面鏡とロータ部を回転軸の同じ自由端側に設けて軸受手段をロータ部により回転多面鏡側に露出させないことで軸受手段から飛散したオイルミストをロータ部で遮断しているのに対し、引用例1記載のものにおいては、そうでない点

相違点〈2〉

本願考案においては、回転多面鏡がロータ部上面に設けらた取付基準面にロータ部より回転径の小さな回転多面鏡を密着して取り付けているのに対し、引用例1記載のものは、そうでない点

(4)  各相違点について検討する。

相違点〈1〉

鏡をロータ部によって回転し、鏡とロータ部を回転軸の同じ自由端側に設けて軸受手段をロータ部により鏡側に露出させない構成は、引用例2に記載されているように、本願出願前公知技術である。

また、軸受手段として潤滑油を有するものが慣用されていることを考慮すると、引用例1記載の光ビーム走査装置において、回転多面鏡、これを回転させる手段及び軸受手段相互の配置と回転させる手段として前記公知技術のような構成を採用して本願考案のようにすることは、当業者においてきわめて容易になしえたことであると認める。

相違点〈2〉

引用例2にも記載されているように、鏡をロータ部より小さな回転径にすることは、本願出願前の公知技術であり、また、取付けに際して基準面を設けることは、当業者が適宜になしうる設計的事項にすぎないから、引用例1における回転多面鏡の回転径を前記公知技術のようなものとし、取付けに際して設計的事項を配慮することによって、本願考案のように構成することは、当業者においてきわめて容易になしえたことであると認める。

そして、本願考案の構成によってもたらされる効果も、引用例1及び引用例2に記載されたものから当業者であれば予測することができる程度のものであって格別のものとはいえない。

(5)  以上のとおりであるから、本願考案は、慣用技術を考慮すれば、引用例1及び引用例2記載のものから当業者がきわめて容易に考案することができたものであると認められ、実用新案法3条2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。

3  審決の取消事由

引用例1に審決認定の事項が記載されており、本願考案と引用例1記載のものが審決認定の2点において相違することは認める。

しかしながら、審決は、各相違点の判断を誤り、かつ、本願考案が奏する作用効果の顕著性をも誤認して、本願考案の進歩性を否定したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)  相違点〈1〉の判断の誤り

審決は、引用例2には「軸受をコイル支持部材により光反射ミラー側に露出させ」(4頁1行、2行)ないことが記載されていると認定したうえ、相違点〈1〉について、「軸受手段をロータ部により鏡側に露出させない構成は、引用例2に記載されているように本願出願前公知技術である。」(5頁13行ないし16行)と判断している。

しかしながら、引用例2には、光反射ミラーとコイル支持部材を回転軸の同じ自由端側に設けて、コイル支持部材を光反射ミラーと軸受との間に配置した構成は記載されているが、軸受をコイル支持部材により光反射ミラー側に露出させないことは、一切記載されていない。そして、引用例2が頒布された時点において公知であった昭和47年特許出願公開第14601号公報(甲第10号証。特にFig.1)、昭和50年実用新案登録出願公開第78905号公報(甲第11号証)あるいは昭和51年特許出願公開第27409号公報(甲第12号証)にも開示されているように、外側回転子モータ(コアレスモータ)の技術分野においては、コップ状のロータの底壁に、ロータの内側の軸受が外部に露出するような開孔を多数設けることは技術常識である。したがって、このような技術常識を考慮することなくなされた審決の前記認定は、失当といわざるをえない。

審決の相違点〈1〉の判断は、上記のように引用例2記載の技術的事項を誤認してなされたものであるから、明らかに誤りである。

(2)  相違点〈2〉の判断の誤り

審決は、相違点〈2〉について、「取付けに際して基準面を設けることは、当業者が適宜になしうる設計的事項にすぎないから、(中略)取付けに際して設計的事項を配慮することによって、本願考案のように構成することは、当業者において極めて容易になしえたことであると認める。」(6頁7行ないし14行)と判断している。

しかしながら、本願考案は、回転多面鏡の取付けに際して単に基準面を設けただけではなく、外側回転子モータにおいて回転の平面精度が最も優れているロータ部上に取付基準面を設け、この取付基準面に密着して回転多面鏡を取り付けるという新規な構成を採用することによって、後記のような顕著な作用効果を奏するものである。

この点について、被告は、乙第5、第6、第12、第13号証を援用して、光ビーム走査装置においては、回転多面鏡の取付けに際して取付基準面を設け、これに回転多面鏡を密着することは技術常識であると主張する。

しかしながら、これらのものに示されている取付基準面は、ロータ部とは離間した位置であって、別に設けられたフランジあるいは保持部材に回転多面鏡を取り付けるものであるから、回転軸の振れの影響を防ぐことができず、面倒れ量を十分軽減できない。したがって、相違点〈2〉に係る本願考案の構成を、単なる設計的事項にすぎないとした審決の判断は、誤りである。

なお、被告は、本願考案が要旨とする「取付基準面」は、本願考案の出願公告公報においては、回転多面鏡側に設けられる構成として記載されていたが、出願公告後の手続補正によって、取付基準面を設ける箇所が回転多面鏡からロータ部上に補正されたのであるから、原告は、面倒れ防止のための構成としては、取付基準面を設ける箇所が回転多面鏡側でもロータ部上でも実質的には同じであると認識していたといわねばならないと主張する。

しかしながら、本願考案の出願公告公報には、「ロータの端壁の外面に、回転軸2に直交する受け面23が形成され、回転多面鏡1は回転軸2の外端に嵌合されて、回転多面鏡1の取付基準面24が該受け面23に密着固定される。」(4欄24行ないし27行)と記載されている。そして、回転多面鏡が取り付けられる側に基準面が必要であることは当然であり、取り付けられる側の基準面の如何により面倒れ量に大きな差異が生ずるのであるから、ロータ部上に形成された受け面23が回転多面鏡1の取付基準面となることは自明のことであって、被告の上記主張は失当である。

(3)  作用効果の看過

審決は、「本願考案の構成によってもたらされる効果も引用例1及び引用例2に記載されたものから当業者であれば予測することができる程度のものであって格別のものとはいえない。」(6頁15行ないし18行)と判断している。

しかしながら、本願考案は、外側回転子モータにおいて回転の平面精度が最も優れているのは回転力を発生するロータ部であることに着目し、ロータ部上に取付基準面を設け、これに回転多面鏡を密着して取り付ける構成によって、面倒れ量を大きく軽減するものである。このような作用効果は、本願考案に特有のものであるから、これを格別なものとはいえないとした審決の上記判断は、誤りである。

第3  請求原因の認否及び被告の主張

請求原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本願考案の要旨)及び3(審決の理由の要点)は認めるが、4(審決の取消事由)は争う。審決の認定及び判断は正当であって、これを取り消すべき理由はない。

1  相違点〈1〉の判断について

原告は、引用例2には軸受をコイル支持部材により光反射ミラー側に露出させないことは一切記載されていないと主張する。

しかしながら、引用例2記載の発明の実施例を示す別紙図面Cの第1図によれば、コイル支持部材の垂直部分(引出線9で指示されている部分)は、あたかもコップの底壁のように、円筒部を封鎖する壁の構成となっている。ところで、引用例2記載のようなコアレスモータのコイル支持部材における回動軸と固定される部分が、あたかもコップの底壁のように円筒部を封鎖する壁の構成となっているものは、ミラー振動装置に関する昭和50年実用新案登録願第122769号の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写し(乙第1号証)、カップ形コアレスモータの電機子に関する昭和52年特許出願公開第36702号公報(乙第2号証)、振動ミラー装置に関する昭和52年実用新案登録願第51187号の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写し(乙第7号証)あるいは中空円筒状回転子に関する昭和48年実用新案登録願第133814号の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写し(乙第8号証)に開示されているように、本出願前における技術常識である。

この点について、原告は、甲第10号証を援用して、コアレスモータの技術分野においてはコップ状のロータの底壁に開孔を多数設けることは技術常識であると主張するが、原告が指摘するFig.1及びその説明は軸流送風機に関するものであって、軸流送風機に適用する特殊なモータならば通風用の開孔を設けるのは当然のことであるから、原告の上記主張は失当である。

そして、前記のような技術常識を基礎として別紙図面Cの第1図をみれば、軸受をコイル支持部材で遮って光反射ミラー側に露出させない構成であることは自明であるから、引用例2には「軸受をコイル支持部材により光反射ミラー側に露出させ」ないことが記載されているとした審決の認定に誤りはなく、これに基づいてなされた相違点〈1〉に係る審決の判断は正当である。

2  相違点〈2〉の判断について

原告は、本願考案はロータ部上に設けられた取付基準面に回転多面鏡を密着して取り付けるという新規な構成を採用したものであるから、回転多面鏡の取付けに際して基準面を設けることは当業者が適宜になしうる設計的事項にすぎないとした相違点〈2〉に係る審決の判断は誤りであると主張する。

しかしながら、光ビーム走査装置の技術分野においては、モータのロータ部に回転多面鏡を取り付けるに際して、面倒れ量を軽減するために取付基準面を設けること、及び、この取付基準面は、基準面としての機能を発揮させるために取付け相手側の取付面と密着させることは、昭和51年特許出願公開第135544号公報(乙第5号証)あるいは昭和56年特許出願公開第57020号公報(乙第6号証)に開示されているように、本願出願前における設計上の技術常識である。

この点について、原告は、本願考案は回転多面鏡の取付けに際して単に基準面を設けただけではなく、外側回転子モータにおいて回転の平面精度が最も優れているロータ部上に取付基準面を設け、この取付基準面に密着して回転多面鏡を取り付けるという点において新規であると主張する。

しかしながら、回転多面鏡の面倒れ量を軽減するために、回転側部材の取付面を精度良く形成すること、すなわち、回転側に取付基準面を設けることも、昭和51年特許出願公開第55861号公報(乙第12号証)あるいは昭和55年実用新案登録願第153527号の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写し(乙第13号証)に開示されているように、本出願前における設計上の技術常識である。

このような技術常識を基礎とすれば、引用例1記載のもののロータ部として引用例2記載のコイル支持体を採用し、このロータ部上に取付基準面を設け、その取付基準面に密着して回転多面鏡を設けて本願考案の構成を得ることは、当業者ならば極めて容易に想到できたものであるから、「取付けに際して設計的事項を配慮することによって、本願考案のように構成することは、当業者においてきわめて容易になしえたことであると認める。」(6頁11行ないし14行)」とした審決の相違点〈2〉に係る判断は正当である。

なお、本願考案が要旨とする「取付基準面」は、本願考案の実用新案登録出願公告公報においては、「回転多面鏡1の取付基準面24が該受け面23に密着固定される。このように、回転多面鏡1の取付基準面24をロータに形成された受け面23に密着固定させる」(4欄26行ないし29行)との記載、及び、第4図において取付基準面24を指示する面が回転多面鏡の下面であることから明らかなように、回転多面鏡側に設けられる構成として示されているのであって、ロータ部上に取付基準面を設ける構成は示されていない。そして、出願公告後に提出された平成5年9月3日付け手続補正書における実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明において、取付基準面を設ける箇所が回転多面鏡からロータ部上に補正され、「ロータ部上に設けられた取付基準面」という構成が開示されたのである。このような経過からみると、原告は、面倒れ防止のための構成としては、取付基準面を設ける箇所が回転多面鏡側でもロータ部上でも実質的には同じであると認識していたといわねばならないから、「本願考案は、回転多面鏡の取付けに際して単に基準面を設けただけではなく、外側回転子モータにおいて回転の平面精度が最も優れているロータ部上に取付基準面を設け、この取付基準面に密着して回転多面鏡を取り付けるという新規な構成を採用」したという原告の主張は、失当である。

3  本願考案が奏する作用効果について

原告は、本願考案は、ロータ部上に取付基準面を設け、これに密着して回転多面鏡を取り付ける構成によって、光ビーム走査における面倒れ量を大きく軽減するものであるから、これを格別なものとはいえないとした審決の判断は誤りであると主張する。

しかしながら、前記のように、本願考案の構成は引用例1及び引用例2記載の技術的事項に基づいて当業者ならばきわめて容易に想到できるものであり、したがって、原告が本願考案の構成に基づく特有の作用効果として主張する点も、引用例1及び引用例2記載の技術的事項から当然に予測されるところであるから、本願考案が奏する作用効果についての審決の判断にも誤りはない。

第4  証拠関係

証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

第1  請求原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本願考案の要旨)及び3(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第2  そこで、原告主張の審決取消事由の当否を検討する。

1  成立に争いない甲第2号証(実用新案出願公告公報)、第3号証(平成5年9月3日付け手続補正書)及び第9号証(平成3年3月25日付け手続補正書)によれば、本願考案の技術的課題(目的)、構成及び作用効果が下記のように記載されていることが認められる(別紙図面A参照。なお、平成3年3月25日付け手続補正書によってなされた細かい字句の補正については、手続補正書における該当部分の摘示を省略する。)。

(1)  技術的課題(目的)

本願考案は、レーザビーム等の記録装置における回転多面鏡を使用する光ビーム走査装置に関するものである(公報1欄14行ないし17行)。

この種の装置において重要な問題となっていることに、軸受部から飛散する雰囲気中の油滴等による各鏡面の汚れが挙げられる。すなわち、回転中の回転装置の軸受部からの油滴の飛散によって鏡面が汚れてくると、反射率が低下するため、被走査体へ走査するビームのパワーが低下し、画像上の濃度ムラ等となって現われてくる(同1欄19行ないし25行)。

第1図及び第2図は従来の回転多面鏡の構成例を示すものであるが(同2欄20行、21行)、このような構成では、軸受部7の一部が回転多面鏡1側に露出しており、軸受部7内部の潤滑油の油滴(オイルミスト)22が、軸回転時、外へ飛散することによって回転多面鏡1の表面に油滴が付着し、反射率の低下を招く(同3欄27行ないし32行)。

また、従来装置においては、多面鏡をビスによって軸に固定するため、その締付け力による多面鏡の歪みや、取付けガタが生じ、これが原因となって鏡面に面倒れを起こすことがある。面倒れとは、定位置から出射されたレーザ・ビームを回転多面鏡の反射によって感光体等の受光体へ走査する際、各鏡面の、ある基準面に対するバラツキのことである。第3図において、回転多面鏡1は回転軸2によって回転され、レーザ装置から発せられたビームは、鏡面1aによって反射されて感光体3に達するが、その際、鏡面1aが基準面に対して1aで示すように大きなバラツキを生ずると、感光体3へ走査するビーム4の位置が各鏡面によって4で示すように異なってくるため、画像上ピッチムラとなって現われてくる(同3欄37行ないし4欄8行)。

本願考案の目的は、回転装置内の軸受部からの油滴の飛散によって回転多面鏡の鏡面が汚れるのを防止する回転多面鏡の固定装置を提供することであり(同1欄26行ないし2欄3行)、また、面倒れの不都合も併せて解決することである(4欄9行、10行)。

(2)  構成

本願考案は、上記の技術的課題(目的)を達成するため、その要旨とする構成を採用したものである(平成5年9月3日付け手続補正書4枚目1行ないし14行)。

第4図はその1実施例を示すものであって(公報4欄11行)、ケーシング6内に内筒16が固定され(同4欄15行)、内筒16と同心の外筒をもつロータ19(中略)の端壁は、軸受部7の外側で該回転軸2上に嵌合固着され、このロータの端壁の外面に、回転軸2に直交する受け面23が形成され、回転多面鏡1は回転軸2の外端に嵌合されて、ロータより回転径の小さい回転多面鏡1の取付基準面24が該受け面23に密着固定される(同4欄20行ないし27行、平成3年3月25日付け手続補正書3枚目6行、7行)。

このように回転多面鏡1の取付基準面24をロータに形成された受け面23に密着固定させるために、(中略)つまり多面鏡1はロータ端面23との摩擦力によってロータ19に、従って軸2に、一体的に固定保持されている。このように固定することによって多面鏡1には無理な力が加わらず、また取付けガタも生じないので、第3図のような面倒れは発生せず、従って良好な情報記録ができる(公報4欄28行ないし40行)。

(3)  作用効果

本願考案による構成においては、ロータの端壁が軸受部の外側で回転軸に嵌合固着されているので、軸受が回転多面鏡側に露出していない。従って、軸受部で生ずる油滴(オイルミスト)22がロータ19の内部に向けて飛散し、ほとんどはロータで遮断されてモータから外方に出ない。また、ギャップから僅かにオイルミストが飛散しても、回転多面鏡はロータより径が小さく、さらにロータに密着して設けられているため、オイルミストが回り込んで回転多面鏡の鏡面を汚すことはなく、鏡面の反射率の低下を生ずるおそれはない(公報5欄4行ないし11行、平成3年3月25日付け手続補正書3枚目11行ないし16行)。

また、ロータ上面に形成された回転多面鏡を平面的に取り付けるための基準面に密着固定させている。従来、回転多面鏡を面倒れが少なく取り付けるためには、ロータと回転軸の直交精度及び回転多面鏡の取付けフランジと回転軸との直交精度の両方が必要であったのに対し、本願考案では、ロータと回転軸の直交精度のみを出すだけで良いため、回転多面鏡を取り付ける際の面倒れ量を大きく軽減できる(平成3年3月25日付け手続補正書3枚目19行ないし4枚目7行)。

なお、前掲甲第2号証及び甲第9号証によれば、本願明細書には、面倒れ防止について、「以下の実施例はかかる不都合もあわせて解決している。」(公報4欄9行、10行)、「本実施例ではロータと回転軸の直交精度のみを出すだけで良いため回転多面鏡を取付ける際の倒れ量を大きく軽減できる。」(上記補正書4枚目4行ないし7行)と記載されていることが認められ、この記載からは、本願考案における面倒れ防止の目的、作用効果は、特定の実施例のものの目的、作用効果のようにみられないわけではないが、本願考案は、回転多面鏡がロータ部上面に設けられた取付基準面に(ロータ部より回転径の小さな)回転多面鏡を密着して取付けていることを必須の構成要件(審決認定の相違点〈2〉に係る本願考案の構成)とするものであり、上記実施例記載のものにおいても、この構成により前記面倒れ防止の目的を達成し、作用効果を奏しているものであるから、面倒れの不都合解決は本願考案それ自体の目的であり、本願考案の必須の構成要件から奏し得る作用効果と認めるのが相当である。

2  相違点〈1〉の判断について

原告は、引用例2には軸受をコイル支持部材により光反射ミラー側に露出させないことは一切記載されていないから、その記載があることを前提としてなされた相違点〈1〉に係る審決の判断は誤りであると主張する。

成立に争いない甲第5号証によれば、引用例2の発明の詳細な説明の欄には、原告主張のとおり、引用例2記載の発明における軸受がコイル支持部材により光反射ミラー側に露出されていないこと、すなわち、コイル支持部材に開口部がないことを明示する記載は存しないことが認められる。また、引用例2記載の発明の実施例を示す第1図では、断面がコップ形状に表されているコイル支持部材の底壁部分(引出線9で示されている部分)に開口部が存在するのか否か、明らかでない。

そこで、引用例2が頒布された時点において、引用例2記載のコイル支持部材が属する技術分野である外側回転子モータあるいはコアレスモータのロータに関する技術常識を示すものとして、原告及び被告が援用する甲号各証及び乙号各証の記載内容を検討する。

まず、成立に争いない甲第10号証(昭和47年特許出願公開第14601号公報)によれば、同公報に記載されている外側回転子モータは、軸流送風機に使用されるものであって(3頁左上欄2行、3行)、「外側回転子モータでは、ロータはほぼコップの形状をとり、このコップの底部にシャフトが取付けられ、コップの壁部は電磁作動部分により形成される。」(1頁右下欄11行ないし14行)、「シャフト25には、鋼製の回転体として形成されたブッシュ41を固定設置し、このブッシュ41に更に鋼板から形成された部材42を固定して、この部材に通風用の全部で8つの開口43を設けてある。」(3頁右上欄15行ないし左下欄3行)と記載され、Fig.2に通風口(開口部)が表されていることが認められる。

また、成立に争いない甲第11号証の1(昭和48年実用新案登録願第134385号の願書に添付された明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写し)によれば、同明細書に記載されているコアレスモータは、コイル支持面を有する放射状に延びた複数個の腕部と、複数の単コイルとを別体のものとして製作し、単コイルを腕部に設けたコイル支持凹部に嵌まり込ませること(明細書1頁19行ないし2頁15行)によって一体のものとして製作し、その結果として、第1図に表されているような開口部が形成されるものであることが認められる。

さらに、成立に争いない甲第12号証(昭和52年特許出願公開第27409号公報)によれば、同公報に記載されているコアレスモータは、整流子セグメント21をロータ基板と成型により一体化する際に、金型A、B内に軸22と円筒コイル24を挿入し、ロータ基板23の成型時に軸22と円筒コイル24を同時成型すること(1頁右下欄19行ないし2頁左上欄2行)が記載され、第4図及び第5図に、ロータ基板上の開口部が表されていることが認められる。

一方、成立に争いない乙第1号証(昭和50年実用新案登録願第122769号の願書に添付された明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写し)によれば、「7は駆動用のコイルである。この駆動用のコイル7と軸5及び反射用のミラー9が一体に支持円板8に取りつけてある。」(明細書4頁2行ないし4行)と記載され(この「支持円板8」が、本願考案におけるコイル支持部材の回動軸と固定される部分に相当することは明らかである。)、第1図及び第2図に、支持円板があたかもコップの底壁のように円筒部を封鎖する壁状に表されていることが認められる。

また、成立に争いない乙第2号証(昭和52年特許出願公開第36702号公報)によれば、同公報には「カップ形コアレスモータの電機子」が記載されていることが認められるが、このカップ形電機子のカップ底部Aは、本願考案におけるコイル支持部材の回動軸と固定される部分に相当することは明らかである。そして、同号証によれば、第1図、第3図、第5図及び第6図に、カップ底部Aがあたかもコップの底壁のように円筒部を封鎖する壁状に表されていることが認められる。

さらに、成立に争いない乙第7号証(昭和52年実用新案登録願第51187号の願書に添付された明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写し)によれば、同明細書には、振動ミラー装置について、「ミラー支持円板6には、前記磁石3の外周を覆うよう可動コイル7が設けられており、この可動コイル7に流れる電流により、ミラー支持円板6が回動するように構成されている。」(明細書2頁7行ないし10行)と記載され、第1図及び第2図に、ミラー支持円板6が円筒部を封鎖する壁状の構成として表されていることが認められる。

最後に、成立に争いない乙第8号証(昭和48年実用新案登録願第133814号の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写し)によれば、同明細書にはコイル巻枠を用いた小型直流電動機の無鉄心の中空円筒状回転子が記載され、第1図及び第2図に、中空円筒状回転子がその円筒部を封鎖する壁状の構成として表されていることが認められる。

以上の認定によれば、前記甲号各証に記載されている開口部は、外側回転子モータあるいはコアレスモータを特別の分野に使用するために必要なもの、特別な製作方法により製作するために必要なもの、あるいは、特別な製作方法により製作した結果によるものであることが明らかであって、引用例2が頒布された時点における外側回転子モータあるいはコアレスモータのロータに関する技術常識は、前記乙号各証に記載されているように、開口部を設けないものであるというべきである。

このような技術常識を基礎として引用例2の記載をみると、前掲甲第5号証によれば、その発明の詳細な説明の欄には開口部に関する記載が全くなく、また、開口部を必要とする特別の分野に使用する、あるいは、開口部が必要となる特別の製作方法で製作することを示す記載もないのであるから、引用例2にはコイル支持部材に開口部を有しない、すなわち「軸受をコイル支持部材により光反射ミラー側に露出させ」ない構成が示されていると理解しても誤りということはできない。

したがって、引用例2には「光反射ミラーとコイル支持部材を回動軸の同じ自由端側に設けて軸受をコイル支持部材により光反射ミラー側に露出させず、光反射ミラーがコイル支持部材より小さい構成からなるミラー回動制御素子である旨の事項」(3頁20行ないし4頁4行)が記載されていると認定したうえ、相違点〈1〉について「引用例1における光ビーム走査装置において、回転多面鏡、これを回転させる手段及び軸受手段相互の配置と回転させる手段として前記公知技術のような構成を採用して本願考案のようにすることは、当業者においてきわめて容易になし得たことであると認める。」(5頁18行ないし6頁4行)と判断した審決には、何らの誤りもないというべきである。

2  相違点〈2〉の判断について

原告は、本願考案はロータ部上に設けられた取付基準面に回転多面鏡を密着して取り付けるという新規な構成を採用したものであるから、回転多面鏡の取付けに際して基準面を設けることは当業者が適宜になしうる設計的事項にすぎないとした審決の判断は誤りであると主張する。

この点を、まず、引用例1についてみると、成立に争いない甲第4号証によれば、引用例1には「モータ1は、ベアリング3に支持されて回転する出力軸4を備えており、この出力軸4に前記回転多面鏡2が固定されている。」(明細書5頁13行ないし16行)と記載されていることが認められる。したがって、引用例1記載の考案における回転多面鏡は、ロータ部上に設けらるものではないし、また、取付基準面を必要とするものでもないことが明らかである。

また、前掲甲第5号証によって、引用例2記載の発明におけるコイル支持部材(本願考案のロータ部に相当する。)と光反射ミラー(本願考案の回転多面鏡に相当する。)との配設関係をみると、引用例2には、「第1図は本発明ミラー回動制御素子の断面図であり、(1)は光皮射ミラー、(2)は光反射ミラー1(1)の支持体である。(中略)(9)および(9')は駆動コイル(8)を回動軸(3)に結合するためのコイル支持部材である。」(2頁右上欄4行ないし15行)と記載され、第1図に、光反射ミラー1をミラー支持体2という中間部材を介してコイル支持部材9に結合する構成が表されていることが認められる。

以上のとおり、引用例1及び引用例2には、本願考案が要旨とする「ロータ部上に設けられた取付基準面に(中略)回転多面鏡を密着して取付け」る構成は示唆すらされていないことが明らかである。

ちなみに、引用例1記載のものに引用例2記載のコイル支持部材をロータ部として適用しても、引用例2記載の光反射ミラー1とコイル支持部材9とは、前記のようにミラー支持体2という中間部材を介して結合されているのであるから、光反射ミラーはミラー支持体に密着して取り付けられることにならざるをえず、本願考案が要旨とする「ロータ部上に設けられた取付基準面に(中略)回転多面鏡を密着して取付け」る構成が導き出せるということはできない。

この点について、被告は、光ビーム走査装置の技術分野においてはモータのロータ部に回転多面鏡を取り付けるに際して取付基準面を基準面を設けること、この取付基準面は基準面としての機能を発揮させるために取付け相手方の取付け面と密着させることは本出願前における設計上の技術常識であると主張して、乙第5、第6号証を援用する。

成立に争いない乙第5号証(昭和51年特許出願公開第135544号公報)によれば、同公報には「最終組立時に多面鏡40の基準面40aを正確にフランジ面6bにのせて取り付ければ多面鏡40の各鏡面の回転時の面の倒れを非常に少なく精度良く保てることになる。」(8頁右上欄5行ないし8行)と記載されていることが認められる。また、成立に争いない乙第6号証(昭和56年特許出願公開第57020号公報)によれば、同公報には「ポリゴン鏡は、(中略)フランジ10aに、取付基準平面9bを密着させ、パッキン材11を介して止ネジ12で、駆動軸10に固定される。」(2頁右上欄13行ないし17行)と記載されていることが認められる。

このように、これらの公報は、モータのロータ部と回転多面鏡とを中間部材であるフランジを介して結合し、その中間部材であるフランジを回転多面鏡の取付基準面とすることを開示しているにすぎず、モータのロータ部上に取付基準面を設けることは全く開示されていないから、被告の前記主張は失当である。

また、被告は、回転多面鏡の面倒れ量を軽減するために回転側部材の取付面を精度良く形成すること、すなわち回転側に取付基準面を設けることも本出願前における設計上の技術常識であると主張して、乙第12、第13号証を援用する。

成立に争いない乙第12号証(昭和51年特許出願公開第55861号公報)によれば、同公報には「モーター2の回転軸4に対して、回転多面鏡8を同心的に正確に直角に置く為のフランジ16のフランジ面Aは、モーター2の回転軸4に対して前記フランジ16を取付けた後、モーター2を回転させながらフランジ面Aの切削研磨加工を行う等の方法に依り、比較的高精度でフランジ面Aを回転軸4に対して直角となし、フランジ面Aの面振れを押える事が可能である。」(2頁左上欄2行ないし9行)と記載されていることが認められる。また、成立に争いない乙第13号証(昭和55年実用新案登録願第153527号の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影されたマイクロフィルムの写し)によれば、同明細書には「駆動モータ(1)の軸(1a)には多面鏡(4)を保持する保持部材(2)が嵌着されている。この保持部材(2)の上部、すなわち多面鏡取付面(2a)は軸(1a)の中心線と直交するよう水平面が精度よく形成されており」(明細書2頁8行ないし12行)と記載されていることが認められる。

このように、これらの公報、明細書も、モータのロータ部と回転多面鏡とを中間部材であるフランジあるいは保持部材を介して結合し、その中間部材であるフランジあるいは保持部材を回転多面鏡の取付基準面とすることを開示しているにすぎず、モータのロータ部上に取付基準面を設けることは全く開示されていないから、被告の前記主張も失当である。

そして、本願考案は、前記1認定のとおり、相違点〈2〉に係る本願考案の構成、すなわち回転多面鏡がロータ部上面に設けられている取付基準面に(ロータ部より回転径の小さな)回転多面鏡を密着して取付ける構成を採用することにより、「ロータと回転軸の直交精度のみを出すだけで良いため回転多面鏡を取付ける際の倒れ量を大きく軽減できる」という顕著な作用効果を奏するものであるから、このような構成を採用することが、当業者にとって適宜になし得る設計的事項ということはできない。

以上のとおりであるから、相違点〈2〉について、回転多面鏡の「取付けに際して基準面を設けることは、当業者が適宜になし得る設計的事項にすぎないから、(中略)取付けに際して設計的事項を配慮することによって、本願考案のように構成することは、当業者においてきわめて容易になし得たことであると認める。」(6頁7行ないし14行)とした審決の判断は、根拠がなく、誤りといわざるをえない。

なお、被告は、本願考案が要旨とする「取付基準面」は実用新案登録出願公告公報においては回転多面鏡側に設けられる構成として記載されており、出願公告後の手続補正によって取付基準面を設ける箇所が回転多面鏡からロータ部上に補正されたのであるから、原告は面倒れ防止のための構成としては取付基準面を設ける箇所が回転多面鏡側でもロータ部上でも実質的には同じであると認識していたといわねばならないと主張する。

しかしながら、本願考案の出願公告公報の「ロータの端壁の外面に、回転軸2に直交する受け面23が形成され、回転多面鏡1は回転軸2の外端に嵌合されて、回転多面鏡1の取付基準面24が該受け面23に密着固定される。このように、回転多面鏡1の取付基準面24をロータに形成された受け面23に密着固定させる」(4欄24行ないし29行)という記載は、いささか婉曲的であるが、回転多面鏡側の取付基準面24のほか、ロータの端壁の外面に設けられる受け面23をも、回転多面鏡の取付基準面として開示しているものと理解することができ、それゆえにこそ平成5年9月3日付け手続補正が許されたのであるから、被告の上記主張は理由がないというべきである。

3  本願考案が奏する作用効果について

原告は、「本願考案の構成によってもたらされる効果も(中略)当業者であれば予測することができる程度のものであって格別のものとはいえない。」(6頁15行ないし18行)とした審決の判断は誤りであると主張する。

前記のとおり、光ビーム操作装置において、モータのロータ部上に取付基準面を設け、これに回転多面鏡を密着して取り付ける構成は引用例1及び2記載のもの等とは異なり、かつ、これらの公知技術から容易に想到し得ないものである以上、この構成によって奏される面倒れ量を大きく軽減できるという本願考案の作用効果は、当業者といえども予測できなかったものと考えるのが相当であるから、審決の上記判断は誤りというべきである。

第3  以上のとおり、原告主張の審決取消事由のうち、相違点〈1〉の判断の誤りをいう点は理由がないが、相違点〈2〉の判断の誤り及び本願考案が奏する作用効果の看過をいう点は理由がある。そして、これらの点の判断の誤りが、本願考案は実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないとした審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は違法なものとして取消しを免れない。

よって、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 春日民雄 裁判官 持本健司)

別紙図面A

〈省略〉

図面の簡単な説明

1……回転多面鏡、2……回転軸、3……感光体、4……ビーム、5……回転装置、6……ケーシング、7、8……軸受部、9……ステータコイル、10……ステータ、11……ロータマグネツト、12……圧縮バネ、13……回転検出用円板、14……回転検出用センサ、15……止ネジ、16……内筒、17……ステータコイル、18……ステータ、19……ロータ、20……ロータマグネツト、21……押さえリング、22……油滴(オイルミスト)。

別紙図面B

〈省略〉

別紙図面C

〈省略〉

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